先端科学高等研究院の概要

世界の持続的発展に資する「リスク共生学」に基づく研究拠点の形成

横浜国立大学では、本学の強みである「安全工学」や「リスク共生学」分野について、世界第一級研究者との連携・共同によって、今日のグローバル社会が直面する多様なリスク等の課題に対応する先端的研究を行う世界的拠点構築を開始しました。

21世紀を迎えた現代社会は、高密度活動によって支えられている都市への人口集中が加速しており、人間活動に甚大な影響を及ぼす要因(リスク)は、地球温暖化やエネルギー枯渇など地球規模のものから地域・都市、人の健康などまで大小さまざまな局面において存在しています。21世紀における安心・安全かつ持続可能社会の実現において、これを阻害する大きな要因として、特に以下が大きな課題であり、これらに対する社会のしなやかな強靭化を実現することは、人々の生命・財産、社会資産を守り、産業活動や都市機能を維持するうえで重要です。

  1. 地球規模での資源・エネルギーの枯渇や生活環境の劣化に伴う健康リスクの上昇
  2. 自然の猛威がもたらす地震、津波、台風、火山活動等の災害の大規模化と高頻度化
  3. 社会基盤や設備の老朽化に伴う橋梁・鉄道等の構造物崩落やコンビナートクライシス(産業災害)の多発による甚大被害の発生と社会機能の低下
  4. 高度化・複雑化や未成熟さに加えて、ヒューマンエラー等の人間事象がもたらす多様かつ深刻な技術やシステムの障害

本学では、昭和42年に工学部に全国初の「安全工学科」が、昭和48年に全国初の「環境科学研究センター」が設置され、安心・安全の分野で長年にわたり多くの研究開発と専門技術者の育成を行ってきました。平成16年には、全学教育研究施設として「安心・安全の科学研究教育センター」が設立され、人文社会科学系と自然科学系とを統合した「安心と安全の科学」分野の研究教育に重点的に取り組むための拠点として活動しています。また、「地域実践教育研究センター」も同時に立ち上げ、グローバルな視野をもって地域課題を解決できる21世紀型人材育成を体系的に活動しています。

このように、本学は伝統的にリスク・マネジメント(安全工学から環境リスク学まで)分野並びに建築・土木分野で実践的・先進的な国際的拠点となっており、加えて、分離融合を推進しながら社会システム・技術システムのイノベーションに対応できる実践的理工系人材を多数輩出してきたことでも国内外から高い評価を得ています。

21世紀社会では、人間活動を取り巻く資源・エネルギー・環境や安全に関する問題に加えて、社会の成熟および老朽化、そして価値観が多様化する状況下において、限られたコストと社会負担の下で上記した多様な問題を解決しながら、安心・安全かつ持続発展が可能な社会の実現が強く求められており、これに貢献するための新しい科学・技術の創生と評価、社会への適切な実装が求められています。

先端科学高等研究院(以下、「高等研究院」という。)では本学の強みを活かし、上記した社会の要請に迅速に応えるため、先端技術システムの開発・評価、リスクの解析と最適管理手法の確立等に基づき、レジリエント(しなやかな強靭性)な社会システムの構築と技術イノベーションを実現するため最先端研究を推進することを目的としています。「リスク共生学」の創出は、これまで様々な分野で個々に行われてきたリスク研究を体系的な研究領域として統合することによって実現するものであり、本学が強みとしてきた研究分野を結集するとともに、世界的な先端研究者の招聘と連携によるシナジー効果を活用するものです(図1参照)。

図1 「リスク共生学」の基本的考え方と研究対象へのアプローチ

本高等研究院を構成する研究分野として、1)産業災害・自然災害リスク研究と都市計画・政策に関する研究を担う安心・安全イノベーション、2)クリーンエネルギー・エコマテリアル・クリーンシティーによる社会空間・価値創造に関する研究を担うスマート・シティ創造とイノベーション、3)ボディエリアネットワーク等を基盤とした高齢社会対応技術・ネットワークの創生に関する研究を担うライフイノベーションを設定しました(図2参照)。

図2 高等研究院の学内における位置づけと相互連携体制

これらの研究分野における具体的な研究課題として、エネルギー材料と機器、エネルギーシステム安全等、先端医療安全、介護等ロボティックス安全と信頼性、産業とプロセスの安全、材料・構造物安全、社会基盤の脆弱性診断、回生・長寿命化、減災・防災等が挙げられ、これらに係る技術・科学的な先端研究の遂行に加えて、公共政策決定プロセスに係るコミュニケーションと合意形成、リスク‐便益解析などの人文・社会科学的な研究課題を実施する予定です。

自然や産業による災害リスクに対応した都市や産業地域の計画、クリーンエネルギーとエコマテリアルによるスマート・シティ、高齢社会に対応した新たな価値創造に資する安心・安全なコミュニティー創生の研究を中心として経済・経営等にも広がる新たな学問領域にまで展開することを計画しており、このような一貫したリスク共生学の拠点として世界初となります。

本高等研究院の長は学長とし、研究分野の選択、教員の選考、組織運営をトップダウンで行いますが、外部委員を中心に構成される運営諮問会議を設置し、時代のニーズにマッチした機動的な意思決定をします。また、研究戦略企画マネージャーを配置し、新たな研究分野の開拓及びそれに伴う学内外の研究者間のマッチングの実施や、外国人研究者を招聘して共同研究に従事する体制整備を実施して研究マネジメント部門を強化します。さらに、既往の研究院と高等研究院との間で教員を流動させ、高等研究院で導入された先進的な運営方式を全学的に広めることによって、全学的改革の起爆剤とすることなど新しい運営制度の実施も計画しています(図2参照)。

本拠点での研究成果については、大学院各学府での研究指導のみならず学部の新しい教育プログラムの導入にもつなげ、社会ニーズのシフトに対応する新学部の創設や従来学部の教育改革に活かす予定です。

上記のような高等研究院では、分野や領域の旧来の枠にとらわれず、ヒト・モノ・カネを一極集中させることにより、研究力をダイナミックに且つ飛躍的に向上させることを目指すものであり、国際都市横浜を資源とした新しい学術分野の創生を目指しています。リスク・マネジメント、建築・都市イノベーション、クリーンエネルギー創生等の最先端研究を実施し、我が国の産業競争力強化へ連結させる世界的研究拠点を形成して、持続可能社会へのイノベーションに貢献します。


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