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副高等研究院長からのメッセージ

横浜国立大学における安全およびリスク研究の経緯

先端科学高等研究院・副高等研究院長・教授 三宅淳巳

本学では、昭和42年に全国初の「安全工学科」が、さらに昭和48年に全国初の「環境科学研究センター」が創設され、安全と環境保全に係る研究および人材育成が開始され、多くの成果と人材を社会に送り出して来ました。以下では、本学におけるリスクの評価とマネジメントおよび人材育成に対する取組の経緯を紹介します。

化学物質によるベネフィットと環境への影響を並行して評価し、そのバランスにたって化学物質の管理原則を導くことを目的とした研究として科学技術振興機構の戦略的基礎研究推進事業による「環境影響と効用の比較評価に基づいた化学物質の管理原則」(代表 中西準子、平成8~13年度)が実施されました。化学物質によるヒトへのリスクを化学物質の暴露に起因する損失余命として定量化し、環境政策に科学的な根拠を提供する研究成果を得ています。

引き続いて本学では、21世紀COEプログラムの研究拠点として「生物・生態環境リスクマネジメント」(代表 浦野紘平、平成14~18年度)が採択されました。生態系における多様なデータベース、化学物質とその生態毒性等のデータベースをそれぞれ構築するとともに、生態リスクを多様な分野で体系化し、生態リスクマネジメントの理念と方法論を取り纏めてきました。

生態リスク評価とマネジメントの考え方および手法、蓄積された研究成果、そして人材育成の活動等が評価され、グローバルCOEプログラム「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」(平成19~23年度、代表 松田裕之)および科学技術戦略推進費「リスク共生型環境再生リーダー育成プログラム」(平成21~25年度、総括責任者 鈴木邦雄)がそれぞれ採択されました。前者では、自然は本来危険なものであり一定の好ましくない影響をもたらす可能性がある一方で、生態系の機能を活用するためには人間活動と生態系の持続的な調和が必要であるとする「リスク共生」の考え方を提示し、リスク・トレードオフの可能性などを把握しつつ、生態系を評価・管理する手法を確立しました。後者はアジア・アフリカ地域における生態リスクと環境被害の拡大を抑制あるいは環境再生するために、リスク共生型の研究・教育を学際的に発展させ、高い実効力・実践力を有する国際環境リーダーを養成するための国際教育プログラムでした。

上記したCOEプログラムと並行して、旧科学技術振興調整費による新興分野人材養成事業である「高度リスクマネジメント技術者育成ユニット」(代表 関根和喜教授、平成16~20年度)に採択されました。「安心」を一つのキーワードとして、工学的知識に人間的側面を加えた"社会-人-物-環境"システムとして観察と判断ができる人文・社会科学的要素を併せ持った人材の育成に取り組んできました。これを機に全学教育研究施設として「安心・安全の科学研究教育センター」が設立され、人文社会科学系と自然科学系とを統合した「安心と安全の科学」分野の研究と人材育成に重点的に取り組むための拠点として活動を開始しました。このセンターは、平成27年度には共同研究推進センターとの統合により「リスク共生社会創造センター」として衣替えし、先端科学高等研究院と密接に連携しながらリスク共生の具体化、リスクマネジメント、リスク共生の考え方と手法の社会実装を推進しております。そして平成26年10月に先端科学高等研究院が創設され、リスクへの合理的な対応の在り方、すなわちリスク共生と安全・安心で活力ある持続可能社会の実現に供する技術・システムの開発・評価に係る研究を推進しているところです。

 先端科学高等研究院・副高等研究院長・教授
三宅淳巳

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