専門性を超えた学術連携で社会に役立つ技術やシステムを実現
藤野陽三 上席特別教授・主任研究者(PI)
「インフラストラクチャリスク研究群」には2つの研究ユニットがあります。国連が2015年に打ち出したSDGsには「住み続けられるまちづくりを」という目標があり、「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」ことを目指しています。都市には、環境問題、ストックの問題、文化社会の問題など、土木工学だけでは解決できない様々な問題があり、かつそれらの問題は連鎖しています。そのため、これらの問題は1つの専門領域では解決できないというのが、今の社会問題の典型です。従って、いかに連携してそれらを解決に導くかを考えることが私たちの責任です。
「エネルギーシステムの安全研究ユニット」は、我が国の産業基盤である石油コンビナートやエネルギー関連施設の安全性高度化のため、プラントプロセスおよび機械システム等が有するハザードの評価を行い、エネルギーシステムのリスク管理研究を推進し、リスク共生社会の創生に貢献します。大きく分けると、コンビナートにおける安全とエネルギー輸送における安全に分けられますが、安全は相互学問のため、様々な分野が協働して解決に当たらなければなりません。本ユニットの大きな成果として、これまで法規制などで都市部では行えなかった「水素ステーション」の研究をできるようにしたことが挙げられます。また、ロケットのエンジンについて、毒性がなく高出力のロケットエンジンを研究開発して、実用化されている他、基礎的な科学研究が行われています。
もう一つの「社会的インフラストラクチャの安全研究ユニット」が扱う問題の一つに、インフラストラクチャの老朽化に関連した問題があります。私は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のディレクターとして様々なプロジェクトに関わっていますが、「Society 5.0」の実現に向けて、実社会において様々なモニタリングや観測を行い、その結果をサイバー空間の中でシミュレーションし、実空間の中にアクションとして戻すという方法が理想だと考えられます。最終的な目標である、フィジカル空間とサイバー空間を結ぶために、実際に私たち自身の手で計測したデータを収集し、道路管理会社とも共同研究を行い、成果やアウトプットも出しています。
IASのメンバーや学内の研究者と協力して、企業や公的な組織と共同研究を行うことが一つの姿だと思っています。世の中のニーズに対応するには、様々な学術を横断的に結集する必要があるとともに、専門が異なる分野の研究者の集まりのため、通訳のような役割を務められる人材を育成する必要があります。これらを実行し、完成された技術が、社会で実装される技術やシステムということになります。そのため、新たなパートナーを模索し、共同プロジェクトを興して、学内で共同研究できるよう努力していきたいと考えています。