第1回横国イブニングセミナー「リスク共生社会-未来社会の多様なリスクとどのように生きるか-」実施報告

 2019年8月21日(水)、WeWorkみなとみらいオーシャンゲートで、第1回目の横国イブニングセミナー「リスク共生社会-未来社会の多様なリスクとどのように生きるか-」を開催し、学内外から45名が参加しました。

 先端科学高等研究院では、7月よりコミュニティ型ワークスペースであるWeWorkを拠点として、研究成果の情報発信や社会実装を目指した、産官学公との有機的なネットワークづくりを積極的に進めています。 横国イブニングセミナーは、WeWorkに集う起業家など、多種多様な方々を始め、学生や地域の皆様など、どなたでも参加でき、知の交流や新たなネットワークづくりの触媒になるようなオープンな場を目指して始められました。

写真1 レクチャーを行う野口教授

 第1回目のセミナーテーマで取り上げた「リスク共生社会」は、横浜国立大学が提唱している「多様なリスクが潜在する科学技術社会」における社会技術を表す言葉で、本学では、リスク共生社会を生きるために必要な新しい学問領域として、「リスク共生学」を確立し、その国際的な研究拠点化を進めています。 今回の講師は、この「リスク共生学」の確立を牽引する、先端科学高等研究院リスク共生社会創造センター長、兼大学院環境情報研究院の野口和彦教授が務めました。

写真2 参加者に質問する野口教授

 野口教授はまず、現代社会における、豊かさの追求が影響の大きな事象の発生の可能性を生み、起きてからでは対応できないような新たなリスクが発生している現状を指摘しました。さらに、社会における個々の課題が複雑化しており、それぞれの課題を最適化した集合解が必ずしも成立せず、相反する状況が生まれている事や、リスクという言葉の意味自体の変遷について述べました。

              

 従来は、アメリカ原子力委員会の定義にもあるように、「リスク=発生確率×被害の大きさ」など、リスクは出来るだけゼロにすべきものという理解で使われていましたが、国際標準規格であるISO31000では、「リスクとは目的に対する不確かさの影響」と定義されていることを引用し、そこで言う「不確かさ」の中には、良いものと悪いものの両方が含まれることを説明しました。

                     

写真3 セミナー会場の様子

 リスクは、社会をどうしたいかという価値観により変わるものであり、目指す社会の実現のために、受け入れるリスクを高い納得性を担保して選択する必要性を示しました。 後半の話題である、「リスク共生社会」は、社会に潜在する多様なリスクの対応に対する納得性の最大化を目指す社会という定義を示し、多様なリスクが存在する現代社会において、目指す社会像に応じたリスクとの共生の必要性を改めて指摘しました。  

 フリーディスカッションの時間では、商品安全設計のアプローチとリスク共生との違いや、管理とマネージメントの定義の違いなどに関連し、会場から質問や意見が続出し、活発なやり取りが行われました。

 セミナー後、参加者からは「横浜国大の取り組みに興味を持った」、「野口先生の熱い気持ちが伝わる素晴らしいセミナーでした。次回もまた是非受講させていただきたいです!」というような声を頂きました。 本セミナーの狙いとする、多様な方々による知の交流が実現した有意義な時間になりました。