IASシンポジウムシリーズ第49回「インフラストラクチャーのレジリエンスとリスク共生-水の災害にどう備えるべきか-」開催報告
2020年12月1日(火)、オンラインにて、2020年度 先端科学高等研究院(IAS)シンポジウムシリーズ第49回 「インフラストラクチャーのレジリエンスとリスク共生-水の災害にどう備えるべきか-」を開催しました。 当日は感染症対策のため,会場での講演・パネル討論をオンライン配信し,135名の一般参加と約198名の学生に参加して頂き、大盛況のうちに終了いたしました。
本セミナーの冒頭では、高等研究院長の長谷部勇一 学長が開会の挨拶を行いました。セミナーの目的や近年の自然災害に対してリスク共生学を中心とした本学の使命についてお話しされました。
続いて、本学のIAS客員教授でもある東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授・東京大学地球観測データ統融合連携研究機構長 池内幸司 IAS客員教授から基調講演として、 「近年の豪雨災害の教訓と激甚化する水害への備え」の題目で講演頂きました。講演では、現在に至るまでの日本の風水害の事例や海外での対策や事例を踏まえて今後の日本の激甚化する 水害への備えについてお話しいただきました。特に,近年の豪雨災害の教訓として病院,高齢者福祉施設における水害を対象とした避難確保計画の策定と訓練実施および市町村役場・企業等 での水害を対象としたBCP(Business Continuity Plan)策定の必要性,気候変動への対応策として「流域治水」の社会全体での仕組みづくりの重要性についてご指摘されました。
基調講演の後には,本学大学院都市イノベーション研究院長の佐土原聡 教授から「激甚化する水害への建築分野の取組むべき課題~戸建て住宅を中心として~(日本建築学会提言)」の 講演を頂きました。気候災害特別調査委員会(2018~2019年度)でまとめられた学会提言から,従来の建築の耐震性能、防火性能、耐風性能、耐雪性能、断熱性能などに並ぶものとしての 耐水性能の確立の必要性をご説明いただきました。建築の耐水性能の確立に向けた建築学会の構造、計画、環境の分野を超えた連携とともに、浸水リスクのレベルに対応した耐水性能の 整備に向けた、土木分野をはじめ関連学会等との連携が鍵になるとのことでした。
講演後のパネルディスカッションでは、池内 IAS客員教授,佐土原 教授に加え,大成建設株式会社技術センター社会基盤技術研究部チームリーダー 織田幸伸 氏,本学IASリスク共生社会 創造センター長 澁谷忠弘 教授,本学大学院都市イノベーション研究院 鈴木崇之 准教授,横浜市政策部政策局政策担当部長 目黒享 氏,神奈川県県土整備局国道調整担当部長・海岸保全担当部長 山田直也 氏の7名のパネリスト,本学IAS社会インフラストラクチャの安全研究ユニットの主任研究者でもある本学大学院都市イノベーション研究院 前川宏一 教授がコーディネーターを務め, リスクがあることを前提としてどのような対策をとるべきか,リスクを共有するコミュニケーションはどうするべきかに関して企業,行政,大学の視点からそれぞれ議論が行われました。 オンライン会場からの「それぞれの立場で自助,共助,公助をするためにはどこから関連情報を取得するべきか」,「近年の自然災害に伴って市民の関心や意識の変化は自治体・行政から感じることはあるか」, 「大学としての今後の役割・貢献をどう考えているか」,「リスク共生の観点からすると,災害対策が新たなリスクを発生させることについて考える必要がある」などのご質問・ご意見もあり 活発なパネルディスカッションとなりました。
シンポジウムの最後には本学の梅原出 理事・副学長から閉会の挨拶があり,本学が世界水準の研究大学知となるために知の統合大学を目指すにあたり,今回のシンポジウムのテーマは理工学,社会学,経済学,教育, リスク共生などの多角的な分野の知見が必要であることから今後も本学において力を入れていきたいというお話でシンポジウムを閉めて頂きました。
本シンポジウムは、株式会社化学工業日報社,神奈川県,横浜市【五十音順】にご後援いただきました。